それぞれの思い出の味

近年のパンケーキ人気は衰えることを知らず、あちこちの専門店やカフェでは長い行列ができています。現在人気を博しているのはメレンゲをたっぷり使用して、ふわふわの食感に焼き上げるスフレタイプのパンケーキです。今後もブームはまだまだ続きそうですが、なぜこのように人々はパンケーキに魅了されてしまうのでしょうか。

パンケーキという言葉に馴染みがない人でも、ホットケーキと聞けばどこか懐かしい感覚になる人は多いのではないでしょうか。パンケーキとホットケーキの違いは材料や製法に関して言えばほとんどなく、元々海外で食事として一般的に食べられているような甘さ控えめのものがパンケーキ、砂糖を入れてシロップやハチミツをかけて食べる甘いものがホットケーキだと区別されているという説があります。

それはさておき、市販のホットケーキミックスを使って家族と一緒にホットケーキを焼いた経験のある人は少なくないはずです。パッケージの写真のようなまん丸できれいな焼き色とは似ても似つかない、不格好で網のような焼きムラ模様になってしまったけど、焼き立て熱々のホットケーキにバターを載せて口いっぱいに頬張ったときの甘くて優しい味はいつまで経っても記憶に残るものでしょう。また、子供でも簡単に作れるホットケーキは昔から絵本などの題材としてもよく取り上げられてきました。小さいころ読んだ絵本のホットケーキを焼く場面が好きだったという経験は多くの人に覚えがあるものでしょう。

手作りホットケーキの懐かしさとはまた少し違う記憶として、小さい頃に家族で喫茶店へ行った時に食べたパンケーキの味を覚えている人もいるかもしれません。メニューのクリームソーダやパフェの文字に目移りしつつ、家で焼いたそれとは違ってツヤツヤの美しい焼き色がついた丸いパンケーキが運ばれてきた時のドキドキした気持ちや、銀色のフォークとナイフで切り分ける時のワクワク感、小さな器に入ったシロップをたっぷりかけて一口食べた時の感動は忘れようとしても忘れられるものではありません。

家で簡単に作れるからこそ、どこの喫茶店やカフェでも食べられるからこそ、パンケーキは多くの人々の記憶に残り、ずっと愛され続ける唯一無二の食べ物になったのです。豪華なデコレーションケーキやパフェではなく、飾り気のない素朴なパンケーキならではの特別な存在感といえるでしょう。現在のブームは、人々の胸の中の甘くて優しい思い出に支えられている一面もあるのかもしれません。